大門百貨店
daimon department store竣工時外観
昭和9(1934)年、丹羽英二は、主要な官庁施設が置かれ、観音寺を中心に賑わっていた津市の大門地区に、信用組合の本店と三重県下初の百貨店を計画していた津信用組合より、津信用組合本店と大門百貨店をあわせ持つ、津信用ビルヂングの設計監理の依頼を受けた。
建築の様式としては、分離派の影響を感じさせるモダンな外観、丹羽の独立後の第一作である下呂温泉湯之島館の洋館に見られるようなアールデコ調のディテールがこの建築のデザインの特徴と言える。
この地上4階塔屋1階、高さ23.85m、延面積2,465㎡、鉄筋コンクリート構造の建物は、地階に津信用組合の金庫、1階に百貨店売場及び津信用組合事務室、2階に百貨店売場及び百貨店事務室、3階に百貨店売場及び大食堂、4階に大集会室、そして屋上には鈴鹿山脈及び伊勢湾を一望できる屋上テラスが計画された。
昭和11(1936)年5月1日、大門百貨店の開店時には、当時津市の人口が7万人弱であったにもかかわらず、初日入場者は11万人を超え、入場が30分毎に制限されるなどし、開店初日からの3日間の入場者は20万人を超える驚異的な数字となった。
その後、戦災でも焼け残り、戦後まもなく営業を開始した。昭和30(1955)年には松菱百貨店となり、昭和38(1963)年に松菱百貨店が現在の地に移転するまで、津市唯一の百貨店として常に津市の流行の発信基地としての役割を担い続けた。4階の大集会室に開設された洋画専門の映画館「大門劇場」も松菱百貨店が移転するまで市民の娯楽の場として存在した。
- 開店時の様子
- 戦災時
昭和38(1963)年の松菱百貨店の移転後は、1階がパチンコ店、2階から上が風俗営業店を営む、大門観光ビルとして存在していたが、2018年に解体され、跡地には2階建ての商業ビルが建っている。
- 現在外観
- 現在外観
- 現在外観(望遠)
- 1階パチンコ店